珍獣上陸

バークリー音楽大学で教え始めてから、3年半が経った。その間、夏学期も休むことなく教えて来たので、すべて合わせると10学期分、つまり5年分教えた計算になる。

はじめのうちは試行錯誤だった「教授業」も、最近はだいぶ慣れて来た。もう何度も同じ授業を教えて来ているけれど、毎回、前回の反省を基に詳細を詰めたり、常に新しいアプローチを取り入れたりしているので、飽きることはない。

バークリーでの仕事を始めるにあたり、僕にとってはどこの科で教えるか、ということがとても大事だった。バークリーで教えるということは、やはり相当なステータスらしく、「どこの科でもいいから教えたい」という人々は五万といる。でも、僕の場合は自分の「ドンピシャ」なエリア、つまり作編曲とプロデュース、という内容でなければ教えるつもりはなかった。

つくづく僕はラッキーだったのだと思うが、そもそも僕が国際関係額の分野からミュージシャンに方向転換した際の最大の理由が「仕事に費やす時間がすべて自分のキャリアに関わるスキルアップに結び着く職業」を選びたかったからなのだ。信念を曲げないことは必ずしも簡単なことではなく、やせ我慢も多々してきたと思うが、結果的には我慢勝ちだったのだ、といったら奢りだろうか。

1年ぶりに日本に向かう飛行機があと1時間半で東京に着く、という折に、僕はつくづく日本が大好きなんだなあ、と皮膚で感じた 。そしてふと、その大好きな日本とその音楽シーンに、ようやく本当の意味で自信を持って還元できる人材になったのではないか、と思った。

これまでも、留学した際の初心、「米国の地で学んだことを日本に還元する」ということは忘れずに、毎回帰国する度にワークショップなどを通して伝えてきたつもりではある。けれど、今回日本で行われるワークショップの準備をしている段階で「ああ、こういうことって昔はうまく伝えられなかったよなあ。(自分でいうのも何だが)これは参加者にとって、これまでにないぐらい有意義な内容になりそうだなあ。」と確信したのである。

こういう内容を提供出来るようになったのは、ほかでもない、毎日相当厳しい環境の中で鍛えられてきたからだ。米国で、世界中から集まる優秀なミュージシャンたちと日々バトルを繰り広げ、世界中から集まる相当アクの強い生徒達を納得させる授業を展開するために勉強と創意工夫を続け、それが積み重なって今がある。

現在バークリーで教える教授陣は600人近くいるが、うち日本人は5人しかいない。しかもあとの4人は演奏系の科なので、5人の中でも作編曲を教えているのは僕だけだ。そんな「珍獣」を見物しに、今回のワークショップにも足を運んでいただけたら、と思っている。

<お知らせ>

12月29日、1月4、5日、および12日に限定して各地で行われるワークショップ。詳細をウェブにアップするのが相当遅くなってしまって本当に申し訳ないのですが、まだ都合がつけられる方は、是非学びに来て下さい。詳しくは「Events」ページをご覧下さい。

 

 

公式ウェブサイト全面リニューアル

2006年に最後の全面リニューアルをして以来、実に7年間の間、マイナーアップデートを除いては全面的なアップデートをして来ませんでした。

7年といえば、インターネットの世界ではひと昔どころかふたつもみっつも昔の話。新しいウェブサイトは、デザインをシンプルに、でもコンテンツは増やしやすいように、をテーマに作ってみました。

まだコンテンツはさほど多くありませんが、ナビゲートのし易さを保ちつつ、徐々にコンテンツを増やしていきたいと思っています。新しいサイトも、どうぞ宜しくお願いします。

2013年秋
リー・アベ

S&R ワシントン賞

先週の土曜日、ワシントンD.C.にて、S&Rワシントン賞の授賞式が
行われ、2012年度受賞者のひとりとして参列してきました。

今回の受賞者は、ビオラ奏者、ピアニスト、ダンサー、そして僕
(作曲家)という顔ぶれだったのですが、すべての受賞者が20分
間の演奏を披露し、僕はチェロと歌とのトリオ(ちなみに僕はピアノ
です)で3曲演奏してきました。

3曲中2曲は今回のための書き下ろしで、仕上がったのも本番3週
間前と、練習も時間との闘いでしたが、結果的にはなかなか好評で、
なによりほっとしました。ちなみに、そのうちの一曲は、今回の
ボストンマラソンの事件に立ち向かうボストニアンたちの不屈な精
神にインスパイアされて作った曲(「Dancing in Beantown」)でし
た。

またコラムでも書く予定ですが、受賞者のみなさんや過去の受賞者
のみなさん、そして財団の設立者の方々をはじめ、素晴らしい人々
との出会いを通して、大きな刺激を受けてきました。いやー、大事
ですね、こういう刺激って。

今回の受賞を通して、またひとつ上のステージに行けるよう、今後
は一歩上の努力をしていこうと、強く思っています。日本のみなさ
んにも、近々新しい音を届けられるといいなあ。

(2013.05.25)