5年という時間、そしていま僕がいるところ・その1 (12.17.2002)


 Photo taken by Tsunenori 'Lee' ABE


Syncopationの初めての日本ツアーが終わって3ヶ月半が経った。そして、ボストンでの大きな公演が終わってひと月半が経った。その度に多くのことを学び、ここにコラムとして記そうと思ったのに、あまりに忙しくてどうにもこうにも書けずにいた。(忙しい、とか言うのは言い訳がましくて嫌いなんですけど。)

そもそもこのコラムを書き始めたのは、自分がそのときそのとき感じたことを文面に残すことによって、後々振り返って「あの頃はこんなふうに考えていたっけ」などと思い出しながら軌道修正したり反省したり、日本にいるファンのみなさんや友人たちに、遠くアメリカにいる僕が何をして、どんあ光景を見ているのか、少しでも報告できたらな、という思いがあったからだった。その時々に感じたとことを、まだ感じたてホヤホヤの温度で、きちんと冷凍保存しておきたかった。そうじゃないと鮮度が落ちてしまうから。

なのについつい大事なことを先延ばしにしちゃって、ごめんなさい、みなさん。このコラム、そんなこんなで何気なく始めたのになんだか異常に人気高いんですよね。どうしてなんでしょう??よく「コラムを毎回楽しみにしています」ってメールもよくいただくし、リンク貼ってくださる方とかも、「コラムがお勧め!鮮度も抜群。取れたてほやほやのうっふーんあっはーん(なわけないだろ)」なんて書いてくれたりする。こんな僕がなんとなく感じてることをつらつら思うままに書いているだけなのに、びっくりしちゃうし、なんだかありがたい話です。

さてさて、話を戻します。

確かにこの3〜4ヶ月は異常なまでに早かった。そして、その変化の速度もこれまでの人生で一番早かったのではないかと思う。何が大変だったのかというと、まあいろいろあるんだけど、Syncopationがメンバーチェンジをしたこと。しかもふたりも。

アルトのステファニーと、テナーのカイルが日本ツアーの後突然「辞めたい」と言って来た。元々サウンド・エンジニア志望だったステファニーは、当初歌手とエンジニアを両立していこうと思っていたのだが、やはりエンジニア業を中心にしていきたい、という理由。カイルは今は学業に専念して、自分の可能性をもっといろいろと見てみたい、とのことだった。

ふたりともまだ18歳だったし、Syncopationのように本格的にプロ活動していくグループを学生でありながらやっていくのは、よほど気合と労力が必要なので、まあ仕方ないことかな、って気もする。僕も日本でプロ活動していたア・カペラグループを自ら選んで辞めた身だし、気持ちはわからなくはない。

でも、突然言われた僕とクリスティはこの数ヶ月本当にしんどかった。こっちでライブもいくつか決まっていたうえに、来年もまた日本ツアーをすることもほぼ決まっていたし、軌道に乗りかけていたものをまた一からやり直さなくてはならない、ということが何より大変だった。特に僕は、外国人としてこの国に身を置くこと自体が大きなハンディだし、ある程度の期間のうちに軌道にのせないとこの国で活動を続けていけるかどうか分からないので、「またやり直さなあかんのか・・・。」と、一時はお先真っ暗状態だった。

でもいろんな人に励まされながら、思ったよりはるかに早く新しいメンバーが見つかった。しかも幸運なことに新しいメンバーには、これまでのSyncopationのレベルをはるかに上に持ち上げる実力のミュージシャンが見つかった。何回かリハを重ねていくうちに、「このグループはとんでもない可能性を持ってるんじゃないか???」って感じるようになってきた。いま世界レベルで活躍しているジャズ・ボーカル・グループといえば、このグループを作るきっかけを与えてくれたシェリルのいるマンハッタン・トランスファーと、来年の2月にオハイオ州のジャズフェスティバルで一緒に仕事をさせていただく、キム・ナザリアンのいるニュー・ヨーク・ヴォイセスのふたつがあるが、彼らのいるレベルに行く可能性がを感じさせる顔ぶれが、いまの4人だと思う。

アルトに決まったクリスティーン(ソプラノのクリスティと名前が似ててややこしい!!)は、バークリーの卒業生で、バークリー時代はトランペットで全額授業料免除の奨学金をもらっていた実力の持ち主で、歌手としても来年にファーストアルバムを出す素晴らしいミュージシャン。性格も快活で、既にグループのムードメーカーになっている。クリスチャン・マクブライドやパキート・ドゥリベラなんかとも共演経験のある、すごい奴です、はい。

テナーに決まったジャーミーは、スキャットの世界的権威ボブ・ストロフをして「僕より出来るんじゃないか、こいつ」と言わせしめたスキャットの天才。難しいハーモニーも難なくこなし、Syncopationの目指す音楽と彼の才能がまさに相思相愛だったような男。まだ20歳なのにビジョンも才能もあるし(おいおい、俺が20歳のときはいったい何しててーん!?)、素晴らしい加入だと心底思う。

なにより素晴らしいのは、彼らふたりは正式に加入が決まってまだ2ヶ月も経たないのに既にSyncopationを心底愛しているし、このグル
ープの持つ可能性に気づいていて、音楽面だけじゃなく様々な面で「どうしたらこのグループをもっと多くの人に知ってもらえるか」、「さらいい音楽を作るにはどうしたらいいのか」というlことを本当に真剣に考え、行動している。年齢層も少し上がって、いよいよプロフェッショナルのグループとしてさらに飛躍する素地が出来た気がする。

「素材は整った。あとはどう料理するか、だ。」

ってなところに、今の僕とSyncopationは来ている



(その2へ続く)