また飛べる・・・、また飛ぼう (09.23.2001)
Photo taken by Marina KOSAKA
この二週間は、本当におかしな二週間だった。いままで生きてきた中で一番、平和のあり方というものを現実のものとして真剣に考えた。日本で過ごした濃い2001年の夏を振りかえる間すら、まるで無かった。新しい学期がはじまり、エキサイティングな日々が来た、と思っていた矢先の、あのテロだった。
上の写真は、事件のちょっと前に知人からもらったものである。その方が、留学するお姉さんの乗った飛行機が旅立つのを撮ったもので、Voice
Connection の公演とレコーディングを終えてアメリカに戻ったばかりの僕の心を、なんだか妙に捕らえてくれたこの写真。思わずメールして、「僕のサイトに載せちゃってもいいですかぁ?」なんて頼んじゃったのだ。
快諾をもらって喜んでいたのも束の間、なんとよりによって民間飛行機がニューヨークとワシントンDCに突っ込んでしまったわけである。当然、僕はこの写真を使える心境ではなくなってしまった。自分の住む街から飛んだ飛行機。しかもつい4日前には、日本から遊びに来ていた友達が家路へと向かうのに飛んだ時間帯。正直いうと、僕はいまだに空を飛ぶ飛行機を見るとどきどきしてしまう。はっきり言って空港なんて、行く気もしない。
でも、今日になって突然、やっぱりこの写真を載せたくなった。
また、飛べる・・・、また飛ぼう。
そう、思った。
大学の友人で、ブルガリアから来たマリンバ奏者がいる。今日はその、彼女のバンドの演奏を聴きに行って来た。ブルガリアを始めとする東欧的な音楽と、コンテンポラリーなロックやフュージョンっぽい音楽との融合。久しぶりに、音楽を聴いて圧倒された。こんなすげえ音楽がアンダーグラウンドに存在しているアメリカって国の、奥深さにぶったまげた。
アメリカ・・・。世界中から、夢を求めて人が集まる国。そして、それ故なのかもしれない、大きな矛盾を抱える国・・・。
ドイツ人の作曲専攻、パトリックは言う。「アメリカで無名の存在でいるのか、それとも母国で名声を馳せるのか。どっちがいいかなんて、分かり切ったことだよ。」
そのとおりだ。別に有名になりたいとは思わないが、自分が一番力を入れている分野では、一目置かれる存在でありたいとは思う。そして確かに、日本のア・カペラ界では、徐々に僕の名前は人目に触れるようになってきている。それは正直に、ありがたいことだと思う。でも・・・。それでも僕は、このアメリカという国に、少なくとも20代のうちあと何年かは、這いつくばってでも留まっていたい。無名の存在であっても、アンダーグラウンドであっても、世界からしのぎを削ってミュージシャンたちが集まってくるこの地で、自分の真価を試していたい。落ち着くのはその後で充分だ。
Voice Connection の企画は、とてもいいものになったと思う。尊敬できるミュージシャンたちと仕事する、というのは本当に刺激的だし、あれだけ短い間でア・カペラを仕上げる、なんて前代未聞なことができたのも、そういう連中とだったからこそできたのだろう。
今回特に嬉しかったのは、ミュージシャンたちに評判がよかったことだった。音楽を知っている人間をうならせるのは、「○○くんかっこい〜い」ってなノリの人たちをうならせることよりはるかに本当に難しいことだ。(なんていいながら、「つねくんかっこい〜い」っていわれると悪い気はしなかったりして。えへへ)耳の肥えた「手ごわい」相手をうならせることは、ミュージシャン冥利につきるのである。
ただ、今回のアンケートをみていて気になったのは、(リップサービスもあるんだろうけど)「日本ア・カペラ界の最高峰でした」といった内容のものがけっこうあったことである。これは何を意味するのであろうか。もちろん、そう書いていただけて、ものすごく嬉しかった。ただ、日本全体のことを考えたときに、僕らのような即席企画ものグループが、そこまで評価を得ていいのだろうか、と思ったのも事実である。裏を返していえば、他のグループは何をしてんねん、ってことでしょ。
アメリカと日本の音楽界の大きな違いは、トップレベルのアーティストの層やレベルが、圧倒的に違うことだ。そしてこれはア・カペラ界にもいえる。ア・カペラ人口や、ア・カペラの認知度でいえば、近年の日本はだいぶすすんでいるかもしれない。ハモることそのものも、協調性のある日本民族は、比較的得意なような気もするし。
でも、
「何かを創り出す」ア・カペラが、日本にはない。
どのグループも、「癒しの音楽」みたいな領域から1歩も踏み出していない。
これで、いいのだろうか?
日本のコーラス界のレベル向上のために、僕にはなにができるだろうか。
去年の春ごろ、僕のミュージシャン人生は、しばらく中断せざるをえないかと思っていた。いま振りかえると、正直かなり辛い時期だった。でもいまこうして、日々成長している自分を感じられることが、僕にミュージシャンとしての自覚をもっと与えてくれる。やめなくてよかった。支えてきてくれた多くの人たち、本当にありがとう。Voice
Connection のみんな、まじで楽しかったぜ。また何かやろうな。
また飛べる。また、飛ぼう。
この写真、やっぱり好きだなぁ・・・。