進化形・夏・2002・Syncopation (05.01.2002)


ひとつのベクトル。
Photo taken by Tsunenori 'Lee' ABE


今日は史上最高に時間がないんです。ビッグバンドの編曲を、明日の今ごろには終えてなくちゃいけないのに、まだ半分も終わっていない。それでも書いているんだから、それなりの理由があるんである。えーい、あとは野となれ山となれ。でもなるべく手短に。誤字脱字、奇文変文(造語)があったら、あとで訂正します!だから多めに見てね。

それなりの理由。それは、今日、今年に入ってみたライブの中で一番感動しちゃったからなのだ。

大学の内外を問わず、今年は(というか今年も、というか)超一流アーティストからローカルな人のライブまで、本当にいろいろなものを見ている。でも、今日大学内のカフェであった、ロシア人の友達、ミーシャ(key)が、その友人であるルスラン・シロタ(key, イスラエル出身)とのキーボード・デュオのライブに勝るものはなかった。すげぇぞ、あんたら!

ミーシャの音楽は、前から聴いていて、すげぇな、こいつ、と思っていた。僕より若いのに、音楽の完成度でいったら、俺なんか屁ですよ、「へ!屁!へ〜!」。まあ、ジャンル違うから一概にはいえないんだろうけど。彼の音楽を最後に聴いたのは、確か去年の夏だったと思う。すげぇな、と思ったのは、そこからさらにまた進化している、進化形のミーシャがいたこと。ミュージシャン、進化しなくちゃおしまいだけど、こういう、ラディカルな進化を間近に見ると、すがすがしいものですわ。ほんま。やべぇ、こいつら本気だぜ。

ここ、バークリー音楽院、やっぱすごいところだとつくづく思う。正直なところ、生徒の質はピンキリで、しょうもない人もいっぱいいるんだけどね。でも、すげぇ奴はほんとすごい。もうあと何年かしたら、世界の音楽シーンを賑わせているだろう、という人がわんさかいる。そんな環境に身を置けることが、本当に幸せだと思う。音楽に限らないだろうけど、成長には切磋琢磨が欠かせない。そして、最高のレベルに辿り着きたかったら、最高のものがどんなものなのかを、経験していないと辿り着くことなんてできない。「経験」である。間近で触れて、叩きのめされて、なにくそ、って這い上がって、また叩きのめされて・・・。その循環系が、「経験」となり、自分でも知らない間に、自分のレベルがあがっているものなのだ。

だから、僕みたいなまだまだ発展途上なミュージシャンでも、ここバークリーでこれまで過ごした1年4ヶ月は、気付けばかなりレベルがあがっていた、といえることが多々あったわけである。

ここには、本気中の本気なミュージシャンが、ごろごろいる。音楽の世界は厳しい。本気中の本気だからといって、その全てがサクセスストーリーを築けるわけではない。

日本にだって、本気中の本気なミュージシャンはいっぱいいると思う。でもここアメリカにあるような、世界中の国から、本物中の本物を目指してやってくる、ヤミ鍋ゴッタ煮ミックス・ジュースのようなすさまじさ(分かっていただけたでしょうか??)は、他者を排除する(ほぼ)単一民族性国家(決して在日朝鮮人・アイヌ人などの方々の存在を無視しているわけではありません。だから「性」とつけています。)の日本には、残念ながら起こりにくい。アメリカのすごいところは、決してアメリカ人がすごいのではなく(実際、「純」アメリカ人のミュージシャンより、移民のミュージシャンのほうがおもしろい人材が多かったりする)、ここに世界中から優れた人材が集まってくるところである。


僕は、かねてから「逆輸入」をしたいと思っていた。

外に出て、そこで日本人であり、そしてそれ以上にひとりの「Human Being」である僕が、そこで作り上げたものを日本に逆輸入して、世に問う。アメリカに来たのは、世界でももっとも熱いところに身をおいて勝負したかったからである。僕の尊敬する故秋野豊氏(タジキスタンで国連の業務中に亡くなった、筑波大教官)は、「勝負するなら自分が一番自身のあることで勝負しろ」と言っていた。僕にとってそれは、自分が心からは信じていない音楽を続け、女の子たちに注目されて喜んでいることからの脱皮を意味していたのかもしれない。(ま、実際、モテて嬉しくない男なんていないけどー。あはは。)

いま、この「逆輸入」が少しずつ形になりつつある。まだ一歩目を踏み出したばかりだけれど、その進化形の阿部恒憲を、日本のみなさんにも、この夏にしっかり見てほしい。ぬるま湯につかり続けて、気付いたらのぼせあがって追い越されていた今の日本にあって、本当に必要なのは、「癒し」じゃなくて活力だと思う。まだまだミーシャのような凄さをあらわすことはできないかもしれない僕だけれど、進行形の僕を通して、そんな活力を感じてほしい。これからは癒されるだけじゃだめなんだ、って、気付いてほしい。

僕のいましている音楽は、万人に受けるタイプのものではないかもしれない。ひと昔の僕がしていたように、若い女の子たちにちやほやされるものでもないかもしれない。でも、音楽が、僕という人間を伝える手段であり、その事実にストレートな姿勢を貫いていることは、前とまったく変わらないどころか、よりストレートになっていると思う。僕がなぜ日本の音楽シーンのぬるま湯に留まっていなかったのか。それが、僕の書く曲を通して、ステージを通して、そして、一緒に公演する仲間たちを通して、少しでも感じていただけたら、本当に嬉しい。

昔から僕を応援してくださっている方々も、ア・カペラやコーラスファンの方々も、ジャズをこよなく愛する方々も、いまの音楽シーンに飽き飽きしている方々も、その他いろんな人たちに、少しでも多くの人たちに来てほしいな、と思います。みんな、楽しみにしててね!





Syncopation (しんこぺーしょん)

男声2、女声2の、ジャズボーカルグループ。人種、国籍とも、バラエティがあり、個々がひとりのミュージシャンとして素晴らしい経歴を持つ集合体。こんなグループが、やりたかったんです。これからもずっと続けていくであろう、このグループ。今年の夏は、このSyncopationが、ピアノ・ベース・ドラムのトリオを引き連れて初来日。日本各地を公演します。

東京は8月23日(金)、神戸は8月31日(土)に公演予定。6月の一般予約に先駆けて、Crazy Harmonyを訪れるみなさんだけの、先行予約が間もなく始まります。正式発表まで、今しばらくお待ちください。